【投資法】理論株価を使った長期投資はっしゃんさんにインタビュー

株式投資には様々な分析方法が存在し、投資する人それぞれに独自の投資理論があります。

インタビュー企画の第2回はITエンジニア投資家の「はっしゃんさん」にお話を伺いました。投資家VtuberとしてYoutubeでも発信しているはっしゃんさん。はっしゃん式と呼ばれる理論株価の分析方法は多くの個人投資家に注目されています。理論株価を用いた投資法は参考になることでしょう。

はっしゃん式理論株価による投資法

はっしゃん式理論株価とは?

-理論株価とは事業価値や資産価値など企業の持つ価値を元に計算された株価のことで、現在の株価が割安かどうか測る指標として使われます。その中で、はっしゃんさんが独自に編み出した理論株価の計算方法があると?

はい。私の場合はEPS(1株当たり純利益)やROE(株主資本利益率)などから算出しています。理論株価は投資家として考えておくべき妥当な株価であって、実現してもおかしくない株価です。ただ、株価が理論株価より安いことは割安の証明ですが、それだけで株価が上昇するとは限りません。決算によって理論株価が上昇するかが大事です。

私の場合、決算を過去数年遡って理論株価を計算し、ビジネスモデルを見て投資をします。その上で売上と利益が右肩上がりというのは絶対条件です。そこから外れたら銘柄の入れ替えをするのですが、それ以外はほったらかしでいいと思っています。

-投資をする上で売上と利益に注目しているんですね?

はい。ただ、意外と難しくて日本は人口減少社会になっているので、そういう会社は少ないんです。とにかく売上と利益が右肩上がりの増収増益企業。基本的には伸びていく会社に投資をしないと、人口減少とともに沈んでしまいますので一番のポイントとして見ています。決算を見て買いの判断をしています。

買うタイミングは決算を狙う

-理論株価を使って株を買う方法を教えてください。

私は決算時に株を買うことが多いのですが、決算の前と後、2通りの方法があります。それぞれ株価の水準によって違いがあるのですが、決算の予測に自信がある場合は決算前に買ってもオーケーです。決算後に当たりかはずれかがすぐにわかるので、はずれたらすぐに損切りです。少しギャンブル要素がありますが、分析力を養うことができると思います。決算後の(理論株価が引きあがった)場合は株価がギャップアップしてスタートするので、見込み通りに買っても買値が少々割り高にはなりますが、損するリスクは少なくなるかと思います。そこは好みの問題です。

※ギャップアップ:株価が前日の終値よりも当日の始値が高くなること

ギャップアップしても、目標株価の理論値も上昇するため、この数字になれば損をせず、利益を上げられるだろうという判断でエントリーするようなイメージです。例えば利益が2倍になったら株価も2倍になってもおかしくないという考え方です。

-リスクリターンの関係は気にされますか?

リスクリターンに関しては確かにあります。リスクが大きい企業ほどリターンが大きいというのは当たり前の話です。その中で個人投資家がどういうスタンスで臨むかというと、個人投資家は株を買うことに集約されるので、損切りをしっかりするということを私は推奨しています。

はっしゃん式取引ルール

-株を売買する際にルールはありますか?

具体的に私自身が実践していることは、買値より株価が1円でも下がってしまったら損切りするというシンプルなルールを作っています。翌日の終値以降で損していれば損切りをします。

買値を下回ってしまうということは、エントリーしたこと自体が間違っているからです。エントリーするのは上昇し始めた時や好決算により企業価値が変化し、ギャップアップするような時です。

あるいは暴落し、これ以上損する可能性が低い時に買えば負ける可能性は低いですね。ちゃんと企業価値を算定したうえで、負ける可能性が低いところでエントリーするのが一番大事です。その上で損してない株だけを長期保有し、損した株は損切りをする。このようなリスク管理を行うことで、それなりに長期でリターンを獲得できるという考えです。

右肩上がりの会社は、その下値を何年間も下回ることなく上昇し続けています。そのポイントを長期のチャートを見て探し、ビジネスモデルを見て適正価格で買うことが重要です。

理論株価の投資を始めたきっかけ

会社員に短期売買は難しい

-今の投資スタイルを確立したのはいつ頃からですか?

投資を始めた頃は短期で売買をしていました。ただ会社員として働きながらですと、業務と並行して株式の動きを見すぎてしまって……。よくないですよね?なかなか結果も残せなかったので、兼業でもできる長期投資にシフトしました。

長期投資をする中で、相場状況によって株価が変動します。株を保有している間、株価が理論株価の半分になったり、2倍になったりします。しかしそれは時間の経過とともに平均化し、徐々に成長していくので、5年10年で見て成長の果実を頂戴できれば、誤差でしかないという一歩引いた考えで投資をしています。

-長期投資にシフトしてからは運用成果は大きく変化がありましたか?

長期投資にシフトしたからといって、最初はうまくいっているというわけではありませんでした。2001年頃はITバブルの崩壊やアメリカ同時多発テロ事件などの影響で相場も良くなかった記憶があります。その後から、ライブドアショック前にかけて徐々に成果が出始めました。

-成果が出たきっかけは何かありましたか?

2001年あたりから月次情報を元にした投資を始めました。テロが起きた時、旅行会社の株が暴落していたので、たまたまHISのホームページを見ると月次情報が開示されているのを見つけました。そこから他の会社も月次情報を開示していることを発見したんですね。

当時は情報も少なく、月次情報を見て投資をする方法が広まっていなかったので月次情報がいい会社に投資すると決算のタイミングでの業績見通し等を先回りができることがわかりました。そこで比較的月次情報が良い会社の株を買っていました。

ライブドアショックやリーマンショックが起きた後は、月次情報の投資手法が通じにくくなりました。情報を取りやすい時代にもなりましたから。そこで行き着いたのが理論株価による投資です。

理論株価サイト「株biz」も活用

-自身で投資サイトを監修しているとのことですが?

はい。サイトに使用している分析ツールは、私がITエンジニアなので自作しました。最初はローソク足の株価チャートを作ることから始めまして、少しずつ移動平均を作ったりしていき、今では決算も自動取得できるようになっています。リアルタイムは無理ですけどね。決算のデータはXBRLから取っています。

※XBRL:国際的に標準化されたインターネット言語で、ダウンロードしたデータをシステムに取り込めば容易にデータの加工や分析が可能となる

そのため投資の情報はもっぱら、自分のツールしか使用していません。チャートは理論株価と合成し、理論株価から業績と株価の連動性なども一目で分かるようになっています。こちらは「株biz」というサイトにて無料で公開しているので皆様にも活用していただくこともできます。

株Bizでは、色々なツールを公開していますが、理論株価のサイトが一番人気ですね。おそらく、全体の6割程がそのサイトのアクセスになっています。理論株価に加えて上限株価も載せています。今の株価が割安・割高か気になる方が多いのではないかと思います。

理論株価を見ていても失敗することがある

-理論株価を使って投資をしている中で一番の失敗は何でしょうか?

一番の失敗は震災の時に電力株に投資していたことですね。失敗した当時はリーマンショックの後であまり買いたい株がなかったんです。とりあえず、配当利回りの高い電力株に資金を入れておけばいいだろうと思っていました。

そこで予期しなかった震災が……。ディフェンシブ銘柄に逃げたつもりでしたが、そこで買ってしまうとは非常に投資家として恥ずかしい失敗でした。

-投資においてなぜ失敗は起きてしまうと思いますか?

失敗はやはり出口戦略を立てずシナリオが組み立てられていなかったから起こると思います。ビジネスも同じだと思うのですがある程度計画を立てて、いいシナリオと悪いシナリオを作っておき、悪い場合は撤退するなどを決めておく。そこが曖昧なままイメージだけでやっていると、悪いことが起こった最悪の場合にどうすべきかを考えられずに失敗してしまうのだと思います。

はっしゃん式投資法を身に付けるポイント

投資しながら勉強した方がいい

-投資は習うより慣れよと言われることもありますがいかがでしょうか?

私もその通りだと思います。勉強しているつもりで投資しても生兵法になってしまう。勉強したことと違うことが起こるのが相場なので。投資を実際に行いながら勉強した方がいいと思っています。野球でもテレビで見るのと実際にやるのでは全然違いますよね?実際に運用を始め、実際に企業が伸びていく様子を株主として同じ時間を過ごすことが重要だと考えています。

-実践するにあたって適している相場はありますでしょうか?

個人的にはいつでもよくて、早ければ早い方がいいと思っています。とにかく経験を積むことが大事です。バブルの頂点で投資を始めたとしても、理論株価を見れば買ってはいけない水準だという事実もわかるでしょう。ただ、常に割安株というのは存在しています。勉強をしっかりしておけば恐れることはありません。いい企業はきっと見つかると思います。

心理的に距離を置いた投資を心掛ける

-投資を成功させるためにメンタル的な部分で大切なことを教えてください。

私の場合は心理的に距離を置くことが大事だと思っています。投資がメインになりすぎて力を入れすぎてしまうとストレスにもなり、負荷が高くなってしまう。私の場合は仕事と兼業でやっていたこともあり、メインとなる仕事を一生懸命頑張る、趣味で頑張ることをしつつ、収入源のプランBとして投資の方で上手くやるというような位置付けですかね。

投資をメインにすると日中の株価の変動や夜のアメリカ市場の動きなど、気になって仕方なくなる。特に投資を始めた最初の頃は面白いと感じてしまい前のめりになってしまうので、つかず離れずくらいの距離感が丁度いいのかなと思います。

私はここ1年ぐらい売買をしていないです。余程のことがない限りは入れ替えもしないですし、そういう意味では値動きから一歩距離をおいて誰でもできるような投資ができているのでは無いかと思います。

株式投資で日本を応援したい

-米国株への投資は行っていないのですか?

そうですね。理由の1つとして決算書を読める英語力がないからというのがありますが、一番大事な視点が、日本を応援したいという気持ちです。米国株に投資をするということはお金儲け優先で、間接的に海外のライバル企業を応援していることになってしまう。日本株を買うことにこだわりたいと思っています。貯蓄から投資へという流れの中でアメリカのような形で、国民の貯蓄を投資に回して日本企業を特に応援することが大事だと思っています。

-最後に今後、日本でも金融教育がスタートしましたがどう思われますか??

金融教育に関しては賛成です。金融教育はこれから必要になってくると思っています。アメリカでは50%以上の人が投資をしていますが、日本では20%にも満たない。そのための環境を整えることは大切だと私も思っています。高校から導入されるということですが、今後、年齢を引き下げていき金融立国を目指すというくらいにしていかないといけないと思います。

私自身も微力ながら、そういう提言や情報を発信していきたいと思っています。

-日本を元気にしていきたいですね。本日は貴重なお話ありがとうございました。


はっしゃん:ITエンジニア投資家。投資家VtuberとしてYoutubeでも活躍。従業員持株会をきっかけに株式投資を始める。日々理論株価や月次情報など投資データを発信している。

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※このインタビューは2022年10月4日に実施したものです。

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