
本記事では米国株投資を始めてみたいと思った方のために、最低限押さえてもらいたいポイントを紹介します。
まず、なぜ米国株に投資するのかについて、納得した上で運用することです。大切なお金を投資するのですから、多角的な情報、データに基づく根拠を得てください。米国株市場にはどんな魅力があるのか、その裏付けは何なのかといった事柄を理解することは、とても重要です。
次に、米国株投資を始める準備を整えることです。一口に米国の株に投資するといっても、その方法にはいくつかあります。また、日本の全ての証券会社で取引できるわけではなく、会社選びの知識も必要です。
そうした情報をまとめていくので、ご自身の運用目的や資産状況に応じて、どんな選択肢が適しているかを考えてみてください。

米国株市場が魅力的だといえる3つの理由
米国株への投資を行う人が多いのは、明確な優位性があるからです。ここでは米国株市場が魅力的だといえる、3つのポイントを紹介します。
30年前から11倍 上昇し続けるNYダウ
NYダウとは、米国の工業株30銘柄を対象とした株価指数のことで、日本の株価指数といえば日経平均株価が馴染み深いでしょう。
そのNYダウはめざましい成長を遂げており、下図に示した通り1991年から2021年の約30年間で、およそ11倍の上昇(約3168ドルから約35294ドル)をしました。

同一期間の日経平均株価の成長率がわずか1.2倍程度(約22983円から約29106円)といえば、その凄さが分かるでしょう。NYダウおよびその他の米国株価指数は右肩上がりで推移しており、2021年にも過去最高値を更新しています。
次々にスター企業を輩出するテック業界
米国では、ITテクノロジーを活用してビジネスを行っているテック企業の成長が著しいです。日本でもお馴染みのGAFAMをはじめとするテック企業群は、新しいビジネスを切り開きながら成長し続けており、米国経済や株価を先導する役割を果たしています。
次から次へとスター企業が生まれているテック業界は、今後も株価の成長を支える存在として、さらなる進化が期待できます。
先進的技術を開発するバイオ業界

世界中がコロナ禍に見舞われる中で、勢いを増しているのが先進的技術を開発するバイオテクノロジー業界です。
ITと並んで米国が世界の最先端をいく産業で、米国経済の高い成長性を支えています。新型コロナウイルス関連の医療に注目が集まりがちですが、バイオテクノロジーは健康、食品、農業、環境、エネルギーなど多くの分野で活用されている技術であり、今後も大きな成長をみせるかもしれません。
米国株市場の躍進を支える3つの要因
好調な米国市場を支える原動力としては、「人口」「エコシステム」「市場規模」の3つの要因を挙げることができます。これらが好循環を生み、他国を寄せ付けない躍進を果たしているのです。
人口

多くの主要国の人口が減少していくと予測される中で、米国の人口は増加し続けています。一般的に人口の増加は、その国の経済の成長につながると考えられています。
人口が増加すると労働力が増えると共に消費も拡大し、企業利益の拡大に直結するため、株価が右肩上がりになりやすいのです。
人口増加がもたらす持続的な企業利益の成長が、米国株市場の躍進を支える大きな要因といえます。
革新的な企業を生みやすいエコシステム
米国では、多くのIT企業が業界の枠を超えて手を取り合い、革新的な技術やアイデアを用いて新たな価値、ビジネス、産業、市場を生み出しており、これが経済成長の原動力の1つとなっています。
複数の企業がパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら広く共存共栄していく仕組みは「エコシステム」と呼ばれます。
シリコンバレーをはじめ、多くの充実したエコシステムが構築されている米国は、革新的な企業が生まれやすい土壌となっており、それが米国株市場の成長につながると考えられています。
世界の投資家が参加する市場規模
世界一の経済大国である米国の株式市場は、他国の市場に比べ圧倒的な規模を誇っています。
2021年7月には株式時価総額が50兆ドル(約5500兆円)を超えました。世界全体に占める市場シェアは約44%と半数に近い数値で、東京証券取引所の6.7兆ドル(約730兆円)とは比べものにならないほど巨大なマーケットであることが分かります。
株式市場はその規模が大きいほど活性化します。米国株式市場の強さを支える要因は、世界最大規模の時価総額、取引金額にあるといえるでしょう。
どんな米国株投資をするか?

次のステップとして、「どんな金融商品を、どんな期間で運用し、どれくらいの利益を得たいか?」ということを考えてみましょう。
どの金融商品にするか?
米国株投資には、様々な方法があります。米国株投資を大別すると、個別株、投資信託、ETF(上場投資信託)の3系統に分類できます。
まずは、自分がどの系統の金融商品に投資するかについて、自身の運用資金、目的、投資期間などから、総合的に考えるのが一般的です。
個別株 | 米国企業の銘柄を、自分で売買する方法。GoogleやAppleをはじめ、ウォルト・ディズニー、コカ・コーラ、ジョンソン&ジョンソンなど、特定の企業に投資したい場合の選択肢です。株価の値上がりによる利益(キャピタルゲイン)や、配当による利益(インカムゲイン)を狙えます。 |
投資信託 | 投資家から集めたお金を、プロが運用する金融商品です。投資信託の種類により、運用方針や目標は大きく異なります。投資家が判断するのは、どの投資信託銘柄を選ぶかと、運用の開始・終了(購入・解約)だけです。 |
ETF | 上場された投資信託を、自分で売買する方法。株式と同様に、自分の裁量で自由に売買できます。日経平均株価を代表とする株価指数に連動するように運用されるのが特徴です。 |
投資期間はどうするか?
金融商品選びと関わることですが、投資期間も決める必要があります。
投資のスタイルは、短期的な利益を追求する短期投資と、将来を見据えてじっくり資産を増やしていく長期投資の2つに大別できます。
一般的に、個別株やETFは短期でも長期でも投資家の好みによって運用可能ですが、投資信託は長期での複利運用(利益を再投資する方法)を検討する人が多いといわれています。
短期投資 | 長期投資 |
・短期間での利益が見込める・売買タイミングの見極めが簡単ではない・資金効率が良い | ・複利の効果を利用して大きな利益が見込める・金融商品の短期的な値動きに一喜一憂せずに済む・資金が長期間拘束される |
どれくらいの利益を得たいか?
米国株投資がどれくらいの利益になるかは、投資スタイルによって大きく変わるので一概にはいえません。
原則として、リスクとリターンはトレードオフの関係にあります。大きなリターンを得るには、大きなリスクを受け入れる必要があります。リスクを抑えたいなら、リターンは控えめになります。なお、投資信託に関しては、目論見書の運用実績を参考にできます。
米国株の始め方
金融商品や投資期間など自分の投資スタイルが決まったら、その米国株投資ができる証券会社で取引口座を開設します(投資信託は、銀行などの金融機関でも取扱いがあります)。
証券会社を選ぶ際の参考ポイント
日本国内には多くの証券会社がありますが、どこでも米国株を取引できるわけではありません。また、米国株を取り扱っていたとしても、個別株、投資信託、ETFの全てを取引できるとは限らないので注意が必要です。
証券会社を選ぶ上では「取引手数料」や「取引銘柄のラインナップ」に注目しましょう。
取引手数料 | 米国株の売買手数料は日本株よりも割高になっています。取引回数が多くなりがちな短期売買では、取引手数料は特に重要なポイントになります。 |
取引銘柄のラインナップ | どの証券会社でも同じ銘柄を扱っているわけではなく、取扱数やその品揃えが大きく異なります。自分が投資したい銘柄を取り扱っているかどうかを調べることが重要です。 |
注意点
米国株への投資を始める前に、注意点も確認しましょう。
注意点(1)米ドル決済
米国の個別株を買うためには、米ドルで取引しなければなりません。とはいえ、自分で用意する必要はなく、証券会社のウェブサイト上で簡単に日本円を米ドルに両替できます。
また、米ドル建てでの取引となるため、購入時や売却時の為替(米ドル円)がドル安やドル高かで、損益に影響します。
注意点(2)リスク
個別株も投資信託もETFも、元本割れする可能性があります。
投資対象の価格が下がってしまう価格変動リスクや、上述した為替リスクなど、いくつかの注意すべき点があり、それらを理解した上で投資する姿勢が重要です。
まとめ
米国の株式市場は、長期的に上昇し続けており、世界中でコロナ禍が続く中でも好調さが際立っていました。収益力の高い企業や最先端技術を持った企業が米国の株式市場に数多く上場している点はやはり見逃せません。
ただし、今後も必ず同様に成長するとは限らず、リーマン・ショックやコロナ・ショックといった下落が再来する可能性もあります。米国株市場に投資していれば安心と油断し、無茶な資産運用にはならないよう注意しましょう。