
本記事では、投資信託を始めるにあたって、最低限押さえてもらいたいポイントをまとめます。
まず、「初心者は投資信託」「投資信託なら安心」というイメージで、何も調べようとせず運用を始めることは危険です。
投資信託の商品数は多く、ローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンの商品が混在しており、初心者の中には「自分の思い描いていた投資信託とは異なるものを購入し、失敗する」というケースが散見されます。
投資信託の魅力やメリット、デメリットをしっかり把握し、投資信託を始めるにあたり必要な準備を整えましょう。ここではそうした情報をまとめていくので、運用目的などに応じて、どんな選択肢が適しているかをじっくり考えてみてください。

投資信託の魅力
コロナ禍で資産形成への関心が高まりつつある昨今、投資信託に魅力を感じる人が増えているようです。
数ある投資の中で、なぜ投資信託が人気なのか、ここでは投資信託ならではの魅力を紹介します。
投資の専門家が運用してくれる
投資信託とは、文字通り「投資」を「信託」する金融商品です。つまり、自分のお金を、他者(運用の専門家)に運用してもらう点が最大の特長です。
個人投資家の代わりに、金融や経済に精通したファンドマネージャーと呼ばれる専門家が、高度な知識や情報収集力、分析力を駆使して運用し、その利益を還元してくれます。

投資信託で得られる利益には、キャピタルゲインとインカムゲインがあります。
キャピタルゲイン | 投資信託の価格(基準価額)が値上がりした際に、売却(解約)することで得られる利益。 |
インカムゲイン | 投資信託を保有しているときに得られる利益(分配金)。分配金の有無や支払い回数は、銘柄によって異なります。 |
株式や債券などに分散投資できる
投資信託には様々な銘柄がありますが、1つの銘柄の中に複数の資産が組み込まれているのが一般的です。
もし個人で多様な資産に分散して投資しようとした場合、潤沢な資金量がなければ実現できません。その一方、投資信託なら1つの銘柄を購入するだけで、実質的に「分散投資」することができるのです。
少額から運用を始められる
一般的な投資信託の場合、1万円前後から購入できるものが一般的で、まとまった資金が必要となる他の金融商品よりも手軽に始められます。
一度にまとめて購入する「一括投資」と、毎月少額ずつ積み立てていく「積立投資」があります。「積立投資」なら毎月1000円程度から始められ、中には毎月100円から積み立てられる金融機関もあります。
様々なタイプの銘柄から選べる
日本国内で一般的に販売されている投資信託には、約6000種類もの銘柄があります。投資信託に組み入れられる資産には、国内外の株式、債券、REIT(不動産投資信託)の他、資源エネルギーや貴金属、農作物といったコモディティが含まれるものもあり、バラエティに富んでいるのが特徴です。

株式だけ、債券だけというように、いずれかの資産に特化した投資信託もあれば、複数の異なる資産を組み入れた「バランス型」の銘柄もあります。他にも個人では購入しづらい、あるいは購入できない海外の株式や債券などを組み入れた銘柄もあるので、バラエティは豊富です。
積立+長期運用のメリット
「投資は積立・長期・分散が有効」といわれていますが、そのメリットはなんでしょうか?
投資信託は基本的に分散投資を行うものですが、さらに積立+長期運用を取り入れることで、価格変動によるリスクを抑える効果が期待できます。
例えば、定期的に一定の金額を購入する積立方法(ドルコスト平均法)なら、価格が高いときは購入口数が少なく、価格が安いときは購入口数が多くなり、平均購入単価が平準化されます。

また、利益を元本に加えて再投資する複利運用を長期的に行うことで、単利運用(利益を再投資しない)よりも大きな利益を狙うことができます。複利運用は雪だるま式に大きくなる性質があり、運用期間が長いほどその効果が発揮されます。

投資信託の注意点
投資信託は非常に魅力的な金融商品ですが、注意したい点もあります。
元本割れのリスクがある
投資全般にいえることですが、大前提として元本が保証されることはありません。専門家が運用する投資信託でも、それは同じです。
多くの金融資産は、世界の政治・経済情勢や金利、信用などの要因によって価格を激変させることがあり、それが投資信託の価格に悪い影響を及ぼすこともあります。
コストがかかる
投資信託の運用には、いくつかのコストがかかります。銘柄によって異なりますが、主なコストは次の3種類です。
購入時手数料 | 購入時に支払う手数料。これが無料の投資信託もあります(ノーロードと呼ばれます)。 |
信託報酬 | 保有している期間中に発生する運用管理費用。信託財産の中から差引かれます。銘柄によって、この水準に大きな差があります。 |
信託財産留保額 | 投資信託を解約する際にかかる費用。銘柄によっては不要な場合もあります。 |
投資家が得られる利益は、運用益からこれらのコストを差し引いた分です。投資信託が良い成績を出せたとしても、手数料によって還元される利益が目減りしてしまう可能性もあります。
レバレッジ型
投資信託の中には、ベンチマークとする指数の値動きに一定の倍率をかけた運用成果を目指す種類(レバレッジ型)もあります。これらは高いリターンが期待できる反面、リスクも高いものです。目論見書で、商品性やリスクを確認した上で、運用する必要があります。
投資信託の税制優遇制度
「NISA(少額投資非課税制度)」「つみたてNISA」「iDeCo(個人型確定拠出年金)」といった名称を見聞きしたことがある方も多いでしょう。これは、投資信託と関係のある税制優遇制度です。
どの投資信託を運用するか決まった人は、これらの制度を利用するかどうかも検討すると良いでしょう。
NISA | つみたてNISA | iDeCo | |
加入資格 | 20歳以上 | 20歳以上 | 20歳以上、60歳未満 |
税制優遇 | 運用益が非課税 | 運用益が非課税 | 掛金が全額所得控除 運用益が非課税 受取時に所得控除が適用 |
非課税期間 | 最長5年間 | 最長20年間 | 加入から60歳まで |
年間非課税投資枠 | 120万円(最大600万円) | 40万円まで(最大800万円) | 年14.4万円~81.6万円まで (加入者に応じて変わる) |
解約・引き出し | いつでも可 | いつでも可 | 原則として60歳まで不可 |
投資対象商品 | 株式・投資信託・ETF・REIT | 一定条件を満たした投資信託・ETF | 投資信託、定期預金、保険 |
いずれの制度も、運用益が非課税になるのが特徴です。ただし非課税期間や年間非課税投資枠、解約・引き出しの可否などが異なるので、自分の条件に合ったものを選ぶことが重要です。
もちろん、これらの制度を利用せずに、投資信託を始めることも可能です。
投資信託の始め方
どの税制優遇制度を利用するか決めたら、投資信託が購入できる金融機関で口座開設します。投資対象や運用スタイルをある程度決めておくと、自分に合った金融機関をスムーズに選ぶことができます。
投資対象資産を決める
投資信託の大まかな種類として、「国内株式型」「国内債券型」「海外株式型」「海外債券型」「バランス型」の5種類があります。
国内株式型 | 主に日本国内の企業の株式に投資 |
国内債券型 | 主に日本の公債や国内企業の社債に投資 |
海外株式型 | 主に海外の企業の株式に投資 |
海外債券型 | 主に海外の公債や海外企業の社債に投資 |
バランス型 | 国内外の株式、債券、REITなどに分散して投資 |
一般的に、大きなリターンが期待できる商品はリスクも大きく、リスクが小さい商品は期待できるリターンも小さくなります。それぞれのリスク・リターン特性を理解した上で、自分に合った銘柄を選ぶと良いでしょう。

運用スタイルを決める
投資信託の種類は、大別すると「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2つに分類されます。
インデックスファンド | アクティブファンド | |
運用目標 | 日経平均やTOPIXといった株価指数などのベンチマーク(基準)に連動する運用成果を目指す | 株価指数などのベンチマークを上回る運用成果を目指す |
運用コスト | 低め | 高め |
リスク | 市場平均並み | 市場平均より高め |
低めのコストで長期的な資産形成に取り組むならインデックスファンド、リスクを受け入れながら積極的に大きなリターンの獲得を狙うならアクティブファンドが向いています。
商品を選ぶ際のポイント
投資信託を選ぶ際には、目論見書や月次レポートの内容を確認するのが王道です。
月次レポート | 基準価額、純資産総額の推移、分配金の実績などがまとめられています。基準価額と純資産総額が共に上昇していれば、運用が順調であると判断できます |
目論見書 | いわば投資信託の説明書。運用の目的や特色、リスク、手数料などがまとめられています |
金融機関を決めて口座開設
投資信託は証券会社だけではなく、銀行、郵便局、保険会社など、いろいろな金融機関で購入できます。
金融機関によって手数料や取扱銘柄数、各種サービスなどに違いがあるため、しっかり比較してから口座開設するのが望ましいです。ちなみに、オンライン証券口座であれば、インターネットで口座開設の手続きが完結します。
まとめ
投資信託は、多くの投資家から集めた大きな資金をプロが運用する金融商品ですが、その投資信託がどのような運用をするのか、自身でしっかり確認する必要があります。
投資信託のバラエティは豊富で、ローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンが混在しています。投資信託だから他の金融商品よりも安心と油断せず、どのような投資を行うのかしっかり理解した上で、検討をしましょう。